森川太一Taichi Morikawa

卒業論文

自分も相手も自由に動ける VR で、足元の円の縮み方が対人距離の取り方を変えるかを調べた

年
2026
文脈
研究
道具
Unity / Meta Quest 3S / Python
予備実験の VR 空間。街に立つアバタの足元に、ピンクの円が描かれている

背景

人が心地よいと感じる対人距離は、周りの環境によって変わる。これを使って対人距離を操作しようとする研究はあるが、多くは実験参加者が立ち止まった状態で評価しており、互いに動き回る実際の場面とは差がある。そこで、自分も相手も自由に動ける状況でも、視覚的な手がかりで対人距離を変えられるかを調べた。

システム

Unity で VR 空間を作り、Meta Quest 3S で体験してもらった。参加者と相手のアバタの足元には、それぞれ半径 1.5m の円を描いた。2人の間が 3m 未満になると、2つの円は円周で接したまま縮む。相手のアバタは実験者が PC から操作した。

本実験の部屋を参加者の視点で見たところ。相手のアバタの足元の円と、手前に自分の円が見える

実験

学生12名が、灰色の部屋3つを通路でつないだ空間を、部屋ごとに3分以上歩いた。部屋ごとに円の縮み方を変え、相手の円が先に縮む条件(A)、両方が同じだけ縮む条件(B)、自分の円が先に縮む条件(C)を比べた。目的を悟られないよう別の質問を課し、2人の距離と移動の向きを毎フレーム記録した。

近づいたときの2つの円を上から見た図。左から条件 C・B・A で、下のアバタが参加者

結果

3m 未満の距離にいたフレームの割合は、A が 19.6%、C が 13.8% だった(有意差なし、t(11) = 1.53, p = 0.154, d = 0.44)。3m 未満での2人の移動の向きの一致度(コサイン類似度)は、C では大きく上がり、A ではほとんど変わらなかった(t(11) = -2.71, p = .020, d = 0.78)。C では近づかれると距離を保とうとし、A では近さをあまり気にしなかったことになる。相手の円が小さくなるほど、相手が近づくのを受け入れやすくなる傾向が見られた。理由としては、円が他人に入られたくない領域を表すので、相手がそれを縮めると自分が受け入れられたように感じる、という可能性を考えた。取ったデータは定量的なものだけで、この理由を確かめるのは今後の課題とした。

アバタ間の距離ごとのコサイン類似度。3m 未満で条件 C は大きく上がり、条件 A はほとんど変わらない

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